テリヤキはアメリカ生まれ

醤油道とはかくも奥深きものなりか。
醤油について調べていくと、醤油だけでなくその時代背景(政治・経済・流通)や材料や技術だけでなくその他の食品群についても広がって来て、情報自体を集めるのはまだいいけど、それらを総合して咀嚼するのはなかなか大変です。
「昔から当たり前」のように思ってたことも、本当はそうじゃなかったということも多々。
例えば、江戸時代は刺身に醤油をかけて食べなかったとか。
当時は酢(蓼酢、辛子酢、ワサビ酢などなど)で食べていたようです。
「江戸じゃ鰹に辛子をつけて食べる」なんてよく言われてたようです(って知らねえよそんなの!)
もしくは煎酒。
煎(いり)酒というのは「日本酒に梅干を入れて煮詰めたもの」です。
醤油に取って代わられたのか今では煎酒なんて聞かないですねえ。
江戸末期になってやっと醤油にもつけて食べる人がでてきたようですが、その醤油も「煮返し醤油」。みりんや砂糖を入れて甘くしたもの。
つうか、そもそも「江戸の甘好み」つうて、江戸っ子はなんでも甘くしてたとか、醤油まで甘くしてたとか・・・・ってなんじゃそりゃ!
話が違うじゃないか、醤油はもともと甘かったんかい!なんじゃそりゃ。
確かに蒲焼きにしても穴子にしてもタレは甘いよなあ・・・
そのままの醤油をかけて食べるという習慣がいつから始まったのかはまだわからないのですが、案外近代かもしれません。
江戸前寿司と呼ばれるにぎり寿司の登場は1800年代つまり江戸末期になってからだし、その他のいわゆる和食の多くも幕末になってやっと完成されたみたいですね。関東の濃口醤油の完成もその時期。
なんか初めから濃口醤油かと思ってたけどそんなことはなかったぜーみたいな。
吉宗の時代あたりから、「醤油」「鰹節」「味醂」「砂糖」が出始めて幕末にようやく形になった感じです。(味醂は古くからあったようだけど、お酒としてであって、料理に使うようになったのはこの時期から)
そういえばソバも江戸初期では味噌や大根おろしにつけて食べてたみたいですね。
ここの「からつゆ」がその古来のそば。
江戸時代といっても長いからひとくくりにしないで注意しなきゃ。
余談ですが、日本では椅子文化が無かったので(飛鳥時代ころにちょっとあったけどすぐ廃れた)、居酒屋は木のテーブルに木の椅子なんてのは近代になってから。椅子もそうだけどテーブルも無いわな。
食事は床において食べたし、もちろん料理も床にまな板を置いて座って調理。
それはさておき、甘い醤油といえば「テリヤキ」
このテリヤキはアメリカでよく見かけて「テリヤキもそのまま英語として定着したんだなあ」と思ってたんですが、そもそも「TERIYAKI」はアメリカ生まれでした(笑)
もちろん「照り焼き」は日本語ですが、日本で言う「照り焼き」は料理の技法。
ソースとしての「テリヤキ(ソース)」とはまた別物。
TERIYAKIはアメリカ人がバーベキュー用ソースとして開発したアメリカン調味料。
(日系二世のタム吉永さんが開発したので、日本と完全に無関係ではないですが)
この時期キッコーマンがアメリカ進出した時期でもあり、1959年から始まったアメリカでのキッコーマンの料理教室や料理本などでこれを紹介、アメリカで普及し定番化したようです。
テリヤキチキンとかテリヤキバーガーって逆輸入つうか、むしろ輸入ですね。あれは和風じゃなくて完全に洋風。日本本来の「照り焼き」とは素材も全然違うし。(同じなのは醤油を使ってるとこくらい?)
そういやアメリカのTERIYAKIは激甘だったけど、あれが『本場の正しい味』だったのか・・・
- 関連記事
-
- フンドーキンの野望 本醸造編
- 台湾醤油『金蘭』
- カネコ醤油
- テリヤキはアメリカ生まれ
- ポッキーまとめ
- たまごかけごはん味噌 ~サンジルシ~
- 醤油味比べ マグロヅケ
この記事のトラックバックURL
http://ppgcom.blog12.fc2.com/tb.php/3142-5e03232e
コメント
- 爾百旧狸:
- まさに「甘かった・・・」ですねw
- S:
- いま手元にある『江戸川柳飲食辞典』(ISBN4-490-10426-X)によると
江戸時代のぶっかけ蕎麦(かけ蕎麦)は、皿を床に置いて正座の状態から
前屈みになって食べねばならず、女性はすすんで食べないものだったそうです。
“ぶっかけを花嫁片手ついて喰ひ”
“尻を高くしてぶっかけ娘くひ”
江戸の蕎麦ブームを横目に、蕎麦の産地信州出身の小林一茶が詠んだ句
“蕎麦の花江戸のやつらがなに知って”
- ◆:
- 英語化した日本語繋がりですね!「BUKKAKE」
- りおこ:400年後の未来の食卓は…?
- おはようございます
何だか鰹に辛子とか、初めて聞く事がたくさんありますね
にしてもテリヤキ逆輸入だったんですか
道理でテリヤキバーガーのテリヤキはカタカナだったです
醤油としてのキッコーマンがアメリカに来た時は相当苦労したという話を聞いたのを思い出しました
では
- スカポン太:
- >爾百旧狸さん
なんかうまいこと言われた!
>Sさん
おもしろい!
いいですね、こういうのは当時の文化事情が目に見えるようで楽しいです。
信州方面からしたら江戸のそばは「カップラーメン」みたいに見えたのかも。
>◆さん
ちょ、そのブッカケ意味違うwwww
でも確かに「BUKKAKE」って英語になってますね。あっち方面の意味で。
コメントのながれおもしれえ
>りおこさん
「鰹に辛子」とか言うとちょっと食通ぶれます(笑)
キッコーマンのアメリカ話も面白いんですが、なかなかそっちまで手つけてるヒマないです 醤油道深すぎる
- :管理人のみ閲覧できます
- このコメントは管理人のみ閲覧できます