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混合醸造(新式醸造)とは何か

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また醤油の話ですよ。
醤油の製法において「本醸造」と「混合醸造(新式醸造)」がありますが、その「混合醸造」とはどんなものか?というお話。(また長いです)
混合醸造を語る前に、まずは簡単に醤油の作り方から。

簡単に言えば、醤油は大豆と小麦をぐちゃんぐちゃんに混ぜて、そこに塩水を加えて発酵させたもの。
もともと穀物の塩漬けから発展してきたものなので、塩を加えるわけです。
塩は強い殺菌作用をもっているために、それにより腐敗を防止するわけですが、「なぜかそうしたら前より旨くなった!」ということで発達していったのが発酵食品。
発酵も腐敗もどっちも細菌によるもので、「腐る」って意味じゃ同じことなんですが、人間が食べておいしくなるものを「発酵」、お腹痛くなるものが「腐敗」。人間にとって都合のいい分類ですが、まあ世の中そんなもんです。

そこで塩ですよ!

実は高濃度の塩分状況下においても平気つうか、むしろ元気な菌もいて、それが「アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)」や「アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus Oryzae)」などの麹菌なのです。
(まあぶっちゃけ言えばカビなんですけどね。こうじカビとも呼ばれています)
特にA.ソーエは名前にsojae(ラテン語、英語ならsoy)が付いているように、まささに醤油のための菌!醤油麹菌。
A.オリゼーは日本酒作りにも利用されますが、醤油で使うのは特にプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)活性が強いタイプの『醤油用オリゼー』です。
塩で腐敗菌を退け、醤油麹菌のみを育成することでつくりあげるもの、それが醤油。
樽の中のカビ農場みたいなもんかしらん。

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大豆と小麦に麹菌を混ぜたものを「麹(こうじ)」。
畑耕して種植えたみたいなもんでしょうか。

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それに塩水をつけこんだものを「諸味(もろみ)」。
腐敗を退けるってことで農薬散布みたいなものですかね。醤油の場合、塩も味の要素になりますけど。

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そしてそれらを「熟成」させます。
この時に酵母や乳酸菌も活躍し、複雑な発酵が次々とおこります。


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温度といえば、醤油は「寒仕込み」で行うのが最も品質が良いとされ、冬に仕込み、徐々に暖かくなり夏に最も活発になる感じがいいようです。(長期熟成の場合は3年くらい熟成させますが)
現在の醤油工場の温度管理もこれに合わせて人工的に管理しています。(ゆえに仕込み時期は冬でなくてもよくなった)

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醤油麹菌は「大豆のタンパク質からアミノ酸」、「小麦のデンプンから糖」を生成。
十分に発酵したら、もろみを絞ってその汁を抽出したものが「醤油」です。収穫完了。醤油完成!


麹菌は普通にそのへんにもウヨウヨいるので、大昔は特に麹菌添加とかしないでほったらかしにして自然発酵(塩があるので自動的に腐敗菌と麹菌が分別される)させていたようですが、今は人工的に純粋培養した麹菌を添加させます。
ただ、醤油麹菌A.ソーエは、どうも醤油蔵に適応して進化したきた菌ぽいのよね。
だから、醤油蔵ごとにそれぞれ独自の醤油麹菌がいて、つまりそれが蔵による醤油の違いにもなってたっぽいです。
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ゆえに何百年前からそこで受けつがれて培養されてきた、キッコーマンの醤油麹菌は、独自のものとして「キッコーマン菌」などと呼ばれています。

日本酒は早くから麹菌を専門に培養する業者(もやし屋)が出現して菌の標準化がなされてきたようですが、醤油は長い間、蔵ごとに違いがあったようです。




さて、明治になって食品にも科学的研究がなされてきます。
そこで醤油の成分というのが、大豆から生成されるアミノ酸だとわかるようになると「大豆を加水分解してアミノ酸をとりだせば簡単に醤油作れるんじゃね?」ということで作られ始めたのが、俗に「アミノ酸醤油(化学醤油)」と呼ばれるもの。
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この時期はうまみ成分としてのアミノ酸の研究があちこちで行われ、「味の素」もこの時期に誕生します。

化学調味料の登場。だからアミノ酸醤油も化学調味料の一種と言えるかもしれない。
他に「ウマミ」とか、そのまんま「アミノ酸」といった名称の化学調味料も登場。
味の素も最初は醤油用のうまみ添加物として開発されていましたが、結局独立して販売されることに。

味の素はアミノ酸の一種「グルタミン酸ナトリウム」を主成分とするもので、これは昆布のうま味成分と言われていますが、実際には小麦などから作られてました。
(小麦のたんぱく質グルテンから発見、抽出されたので「グルタミン酸」の名称がついた)

当時はカッコよかった「化学」の名称がつけらた化学調味料。
今となってはいかにも工業的でグルメ界隈では嫌われてますが、そもそも自然界に始めからあった成分であり、現在は微生物の発酵によって作られているため、醤油や味噌と同じ発酵食品です。
だしの素がOKで、アミノ酸調味料がNGってのは、いかにも名称イメージだけで判断されていて可哀想だなと思う(笑)
まあ、うますぎるがゆえに使いすぎれば味は単調になるし、過剰摂取が問題なのは確か。しかし、どんなものでも過剰摂取すれば危険だし、つうかむしろ塩の方が危ない。
化学調味料が原因とされた「中華料理店症候群」も現在では関係性は否定されていますが、その印象がいまだ強くの残っているのかも。


ちょっと脱線しましたが、アミノ酸醤油。
成分は同じなのでこれで従来の醤油と同じになるはずだった!・・・・けどそうならなかったようで。
醤油の発酵はいまだ完全には解明されていない複雑なもので、単純なアミノ酸生成だけでなく、様々な要素がからみあい、多様な香り、深い風味、醤油独特の味わいを作り出していたのであった。
醤油は日本酒と同じく、麹菌だけでなく酵母や乳酸菌なども加わる複発酵であり、化学的には非常にややこしい。

そういえば、アミノ酸は別に大豆からではなくタンパク質からだったらなんでもいいので、人毛のタンパク質からアミノ酸を生成する、悪名たかい「人毛醤油」なんてのも話題になったことが(笑)

そんなわけで、短期間でつくれるものの、風味や味わいが足りないアミノ酸醤油は日本人にはイマイチ不評で、原材料が不足していた時期には出回ったものの、今の日本では(多分)姿を消しました。
というか、この製法は日本の食品規格(JAS)では醤油と認められていないので、醤油としては存在していないはずです。
日本酒に例えるならば、「合成清酒」にあたるものかと。
合成清酒は今でも普通に売っているのに対し、醤油は厳しいですね。

JASの醤油に関する規定はけっこう厳しく、原材料も「大豆」と「小麦」しか認めていません。
アミノ酸生成は大豆のみからしかできないわけでもないので、最近では大豆や小麦アレルギーの人向けに「きび」や「あわ」、「ひえ」、「米」などから作られた穀物醤油なんてのもあるようです。商品名に醤油とついていても、JASの規定上これらは『醤油』ではないですが。


キッコーマンがアメリカ進出する際に、現地生産されていたアメリカ醤油が存在していて苦戦したことは前にも書きましたが、それらは化学醤油でした。
日本式の醸造方がややこしくて手間がかかるせいもあったのでしょうが、近年になっても醸造方法によるアメリカ製醤油は難しいかもしれません。

それは「七面鳥X事件(Turkey X disease)」
1960年にイギリスで10万羽以上の七面鳥が次々と謎の死をとげる事件がおきる。
その原因はアフトラキシンという高い発がん性をもつ毒物。
それを生み出すのは「アスペルギルス・フラバス」と「アスペルギルス・パラシティクス」という菌。
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これらは醤油麹菌のA・ソーエとA・オリゼーそっくりだったのだ。
もちろん別種なのですが、欧米ではつい最近まで同一種扱いされていて、この時のトラウマによりアメリカ現地業者が醤油麹菌を扱うのは抵抗があると思われるからだ。(もちろんアメリカキッコーマンは気にせず本醸造で作ってます)


そしてやっと混合醸造(新式醸造)ですよ!(やっとかよ)

第二次大戦後、原料となる大豆が不足しており、そこでアメリカからの大豆輸入が再開されることとなったが、従来の醤油醸造方法では無駄が多いとされ、醤油業界には大豆が配分されないかもしれないという事態に陥っていたのだ。

醤油存亡にかかわる業界史上最大の危機である。

そこでキッコーマンは大豆利用率を高め、なおかつ醸造期間も短くてすみ、(アミノ酸醤油とは違い)味も従来と劣らない醤油醸造法を開発する。
これがキッコーマン「新式2号醤油」(1948年)

この時、GHQの担当官だったアップルトン女史の推薦により、この「新式2号醤油」が認められ、「これなら」ということで醤油業界にも大豆がまわってくることとなった。(本によってはアップルトン女史が醤油の価値を低く見て追いつめたとされているが、実際には醤油擁護派)

キッコーマンはこの製法を独占せず全国に無償公開。醤油業界に多大な功績を残す事となる。
この発明は、日本発明協会の最高賞・恩賜発明賞を受賞する。

この「新式2号醤油製法」こそが現在の『混合醸造(新式醸造)製法』である。

その後も改良されてきたようなので、この時とまったく同じかどうかはちょっと資料がなくてわかりません。
産業廃棄物として捨てるしかなかった「醤油粕」(もろみを絞った残りかす)を再利用したり、コプラミール(ココヤシの果肉)を使ったり、いろいろ原料について工夫がなされていたようですが。

こうして新式醸造方は日本中に広まったわけだが、なぜかその開発者たるキッコーマンは本醸造なのよね・・・
コストパフォーマンスが良く、味も劣らない新式醸造は中小企業には歓迎されたが、大企業にして老舗たるキッコーマンにとっては一時しのぎのものでしかなかったのだろうか。

結果、前に書いたように、新式醸造は徐々に衰退し、主に甘醤油地帯で生き残ることとなった。

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新式醸造とは簡単に言えば、従来と同じく大豆・小麦で麹をつくり、塩水とともにアミノ酸液を混合させて諸味(もろみ)をつくり醤油麹菌で発酵させる方式。ゆえに混合醸造。
発酵工程をふむことが、そもそもアミノ酸醤油(化学醤油)とは根本的に違う。
醸(かも)して造るから『醸造』。

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ちなみにアミノ酸液ではなく、醤油そのものを使う場合は「再仕込み醤油」となる。再び醤油で仕込むので再仕込み。この場合醤油そのものが高濃度の塩水なので、塩水は必要無い。


これらの製法を頭において、それぞれの醤油を味わってみた印象としては
『混合醸造』は塩気がまろく、うまみも強いが(醸造期間が短いせいか)醤油のコクはやや薄い。
『再仕込み』はより醤油のコクが深く濃厚。そのかわりもう一回醤油で醤油を造るのでコストや期間も倍。

「混合」として今までまとめて語ってきましたが、「醸造」の名がつかない「混合方式」というのもある。
JAS名称改訂前は「アミノ酸添加法」と呼ばれていたものだ。
名称からわかるように、これは普通に造られた醤油に後からアミノ酸を添加する方式。(シェアは3%)
日本酒でいえば「アル添酒」てとこですかねえ。さすがにこれは水増しっぽいイメージはあるかも。

ただ、個人的にはそれが醤油製法に含まれるのが納得いかなくて、これって「だしじょうゆ」とどう違うんだろう。
「出汁(だし)」は化学的にはアミノ酸。できあがった醤油にだしを添加して醤油加工品としたのが「だしじょうゆ」だけど、これとどう違うのかよくわかりません。

あー、そういえばラーメン二郎に使われている醤油は「カネシ醤油」で、これは醤油醸造過疎地帯の神奈川の醤油で、関東では珍しい「新式醸造」だと言われてます。
まあラーメン二郎のレシピは謎が多くほんとのとこはわからないんですけど、自分はこれは混合醸造方式ではなく、混合方式ではないかと思っていますが。アミノ酸添加法醤油。

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コメント

爾百旧狸:
毎回「学習まんがシリーズ」を読んでいるような錯覚に陥ります
(チョコチョコ大人マンガになっていますがw)
なんですかこの泣かせるオチは!

人毛醤油でワカメ醤油を連想した僕もまたフハイ菌なのでしょうか
スカポン太:
本当は全部マンガにして「学習まんが」ぽくしたかったので、そう言われると凄く嬉しいです。

・・・・腐敗だw
たっきー:
「なるほど醤油ってこうしてできるのか」と単純に勉強になりました。
しかし内容はもちろんなんですが、この「掴み」と「落ち」が!
うまいなぁ。そっちのほうが勉強になったりしてw
樹海:
毎回おもしろく読ませていただいてます。この挿絵がまたイイ! オチも決まってますね! 不覚にも感動しました。
おまけ情報として秋田の醤油「ヤマキウ」ですがこちらも本醸造と混合醸造の両方を出してます。以前お送りした「ヤマキウ本醸造」が(当然)本醸造で、それとは別に「ヤマキウあま塩醤油」というのが県内で売られていて、こちらが混合醸造です。「あま塩」というからには塩分ひかえめなんでしょうが、キッコーマンの減塩醤油が本醸造なのに対して混合醸造で作るあたりが地域性なんでしょうか。いずれテイスティングしてみようと思ってます。
スカポン太:
>たっきーさん、樹海さん
ありがとうございます!
本当はもっと短いつもりだったんですが、混合醸造を語るには本来の醤油がどんなものかも語った方がいいかなあ・・とやりはじめたらこんなんなってしまいました。

>ヤマキウ
おお、なるほど。やはり。
どうも甘醤油地域では「あわくちタイプ」が混合醸造になることが多いみたいです。
にしても、なかなかサンプルのとりにくい東北の醤油が試せたこと、樹海さんにはほんと感謝してます。
二郎大好き:混合醤油について
はじめまして。
らーめん二郎のラーメンがとても好きなので、家二郎とかをしています。
二郎と同じような醤油を探しているのですが、何かおすすめはありますか?
二郎専用のカネシはかなりしょっぱいのですが、えびすや、キッコーヒメなどの混合醸造醤油は甘いと書かれていますよね。
このへんはどうなんでしょうか?二郎専用のカネシ醤油は他の混合醸造とちがってとてもしょっぱいという感じなんですか?
スカポン太:
どうも二郎大好きさん。(なんかラジオネームみたいだw)
これはなかなか難しいですね。
地方醤油は混合醸造でかつ甘くしているのがほとんどです。だから二郎風タレを作る際に足される甘みの分をうまく調整すれば近い感じにはなるとは思いますが、やはりちょっと違ってくるかも。

なので、関東の醤油で「混合醸造」であれば、カネシに近い醤油になるんじゃないかと思われます。ただ、関東では混合醸造は廃れて本醸造がほとんどなので見つけるのは難しそうです。
単純な理屈でいえば、普通の醤油例えばキッコーマンなどに味の素などの旨味調味料を多めにぶちこめば近い感じになるかも・・・ でも本醸造だと風味が強すぎてやっぱりちょっと違った感じになっちゃうかも。難しい・・・

やや甘みの弱い宮城あたりの醤油ならけっこう近いかも。
二郎大好き:
コメントありがとうございます!
二郎のカネシ醤油にはアミノ酸液が使われていますよね。
そのような醤油はもう廃れてしまっているんですね。
安い醤油を使っている二郎。さすがですよね。笑
宮城の醤油、探してみます!

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