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日本における「甘草」

>先日、生の甘草が売りに出されていたので購入、ぬたにしていただきました。わけぎのぬたと大差ない甘みでクセがなく、普通に美味でした。
当然リコリス菓子の風味はこれっぽっちもなく…。日本に生まれて良かった、と、春の味覚を堪能いたしました。
以上、報告まで。


へえ、生の甘草売っているもんなんですね。このレポートはなかなか貴重!
なんで欧米ではあんな変な味付けにしてお菓子にするんでしょうかねえ・・・・
リコリス菓子の「不味さ」の部分は北欧のサルミアッキの影響、あの独特の香りは「アニス」と、ある意味ヨーロッパ文化の結実ともいえますが。

母体となったポンテフラクトのポンテフラクトケーキがどんな味なのか、やはり気になります。

つうわけで、最近の調査報告もかねてリコリス語りでもしようかな。
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■日本における「甘草」

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ロシア産の甘草(の根)は鉄のように堅いらしい。

山梨県甲州市の「甘草屋敷」が甘草を「薬草」として栽培していたことからも、もともとの使用法は薬だったということがわかる。

そのうち甘草の甘みを抽出した「甘草エキス」が甘味料として利用されはじめる。
その甘みは砂糖の約50倍。

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日本において甘草は主に「醤油」、「味噌」、「薬」、「たばこ」に使われる事が多い。
最近では美容品の素材としても使われるが、こういった薬用(たばこも薬用煙草として)を除き、甘味料としての使用は、醤油での使用量が圧倒的。

当初からこの「甘草エキス」は主に醤油に使われていたという。それは明治からというから、かなり古い。
醤油は江戸時代からあるものだが、今に続くほとんどの醤油業は近代からの創業がほとんどであり、「醤油に甘草」は始めから定番であったようだ。
だから「なぜ醤油に甘草を使うのか?」と甘醤油メーカーに質問してもきっと答えはこうだろう
「え?いや、昔からそうでしたけど・・・・なにか?」

甘草は、醤油や漬け物といった「塩けに合わせる甘み」という使われ方が多い。
欧米のリコリス菓子もまた、塩け(塩化アンモニウム)と合わされることからも、甘草の甘みというのはそういったものと相性がいいのかもしれない。
ポテトチップスなどにも、たまに甘草が使われることがあるのもそのためかと。
それにしても、日本で塩化アンモニウムを食用とする文化がなくてよかった・・・・


甘草と同じ天然甘味料である「ステビア」も最近はよく使われ、キッコーナンやキッコーヒメなどは甘味料に甘草ではなくステビアを使用。
フンドーキンやサクラカネヨなどはステビアは使用せず、甘草を使う。
また他では甘草とステビアを合わせて使う場合も多い。

ただ、サクラカネヨなどはこれに、より甘みの強い人工甘味料サッカリンNaなども配合してあり、どの甘味料を使うか、どれだけの配分で使うかは各メーカー次第のようだ。

ともあれ醤油に使われる甘味料の代表は「甘草」。
醤油の甘みの傾向や甘みの強さ、各メーカーごとの味を作るために「ステビア」「サッカリン」も使われる。



■日本の甘草の流れ
大正5年に「三共化学」「林商会」が甘草エキスの事業化をおこない、甘草エキスの大手メーカーとなる。
そして昭和15年ごろに「日本甘草工業協同組合」が創立。
このころは林商会、日本甘草工業(元 三共化学)、丸三商会、池田糖化、丸善商会などが目立った甘草エキスメーカー。
ただこの当時から甘草の原材料はほとんどが輸入。国産は生産量や価格で海外産に対抗できなくなり衰退する。(もともとほそぼそとしか生産されていなかったようですが)
また、その当時の甘草の輸入は満州経由であり、大戦後満州から撤退することとなるとこれら企業は衰退していき、今も存続しているかはちょっとわかりません。

現在、甘草に最も力を入れているのはおそらくゼンヤク工業

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まきしまさんの手書きブログから
九州需要がとても大きかったようですが、最近首都圏でも需要が増えてきたというのは興味深い。

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首都圏での需要はやっぱり美容品や薬での使用ですかねえ。
リコリス菓子はそもそも日本では作られていないし、甘草醤油も無いし。
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コメント

まきしま:
今回も大変勉強になりました!
なんて奥深い甘草の世界…
今後も楽しみにさせていただきます!

そういえば、5年ほど前「ゼンヤクリコリス」には
ダルダルメシアンというCMキャラクターがいたんですが。
どこいっちゃったのかしら…
スカポン太:
おや、「ゼンヤクリコリス」にはそんなキャラいたんですね。
というかCMもあったとは!
森山塔晶夫:
趣味で翻訳小説をよく読むのですが、
訳文に「甘草のキャンディー」と書いてあったら、
「実際のアメリカ文化を知らないな」
とか
「この翻訳者は辞書で調べたものを考えもせず書いてるんじゃなかろうか」
と思ってしまいます。(それほどの頻度ではありませんが、何冊かの小説で出会ったことがあります)
「ferris wheel」を「フェリス式観覧車」と訳すのと同じです。
アラン・ムーアや二ール・ゲイマンの翻訳をしている柳下毅一郎氏は
ジョン・スラデックの短編『血とショウガパン』で
「licorice」を「リコリス」と訳していて
「やっぱりリコリスはリコリスだよな」
と確信した次第。
じゃあ「ショウガパン」は「ジンジャーブレッド」にすべきではないかと言われるとまた話が長くなるのだが……
カートゥーン見てても思うのだが、異文化間の翻訳は難しい。

だがそれがいい
樹海:
リコリス菓子は想像以上に売れてないようで、リコロンは業者が輸入するのをやめちゃったそうです。カッチェスとハリボーのリコリスは売ってましたが。
というわけで先日とうとう初めてリコリス食べました。確かにおいしくない。が……なぜかこの味には憶えがある。まさか地元醤油のせいで免疫が? と思いましたがよくよく考えたら↓これと同じ味でした。
イェーガーマイスター > http://www.jaegermeister.de
まあドイツの養命酒みたいなもんで、日本の酒屋さんでもたまに置いてます。一度試しに買ったことがあるんですが、これは薬なんだ、体にいいんだと自分に言い聞かせなければ飮めない味でした。
ゆずのきB佳:
ステビアって、昔はダイエット食品だったよね。今でもそうかな?
体に悪いっていう噂もありましたが(今は疑いが晴れたみたい)、その時もずっと醤油に使ってたのでしょうか?
余談ですが、私はオリゴ糖が好き。甘味料には使われないのね。なぜかしら。

ツムラの漢方でも甘草が使われてますねぇ。
http://net-shindan.com/shouyaku/kanzou/index.html
http://net-shindan.com/shouyaku/shakanzou/index.html
今度よく訊いときます。
スカポン太:
>森山塔晶夫さん
「異文化間の翻訳は難しい」
まったくですね。
ただ言葉を置き換えればいいわけではなく、翻訳ってその国の文化を知らないといけないのが大変なとこだと思います。
リコリスもやっぱり日本からだとピンとこない文化ですしねえ。
地域文化にかかわらずSFやファンタジー作品だと、その文化圏での言葉ってのもありますし、やはりそれも詳しくないと変な訳文に(笑)
難しいですねえ。でもそれがいい のは同意!


>樹海さん
ああ、リコロン前は置いてあったのに最近全然見かけないと思ったらやっぱりそうなのか・・・・・orz
他のリコリス菓子に比べればまだマシとはいえ、普通のフルーツフレーバーと比べればそうなるのかぁ。
>イェーガーマイスター
やはりドイツですか!あのあたりの味はやはり伝統なのかも


>ゆずのきさん
サッカリンも含めてそれら砂糖以外の甘味料は特にダイエットに有効な成分があるというわけではなく、「糖分が無い甘味料」という意味でのダイエット利用のようです。
だから今でも一応そういう使われ方はされているようです。
昔ほど強調しなくなっただけかも。

オリゴ糖の味は私も好きです。ただ、あれは砂糖と同じ糖類だからなんじゃないですかねえ。お菓子には使われてるんじゃなかろうか?

伝統的には「甘草」は漢方ですね。もし聞ける機会があるのなら、お話楽しみです。
みゆっち:甘茶
こんにちは。またお邪魔致しますm(__)m お醤油に甘草が使われているとは、此方で熱く語られる迄知らなかったです(汗) 材料としてステビアを見掛けた気はしますが、、その時、ステビアって身体に悪いんでは??と思った記憶が有りますが(笑) 皆知らずに甘草と出会ってた、と言う事ですね!私のはっきりとした出会いは、何十年も前の4月8日の花祭りの甘茶ですね!今思うとその時からリコリス好きだったのかも(笑)です。
スカポン太:
みゆっちさんはほんとリコリス好きですねえ。
さすがに西洋風なリコリス菓子は日本では作られませんが、素材としての甘草ならけっこうあちこちで使われてますね。思いのほか身近でした。
はな:
リコリス検索でやって来ました。はなといいます。はなはもう30年以上前にリコリスアイスを食べた1人です!そうあのディッパーダンで高校生のはなにとってもう未知の食品!お店のおばちゃんに止めときと言われながら・・・4人で一個を購入~味は・・・薬くさくて苦いような甘いような・・・・後ひく不思議な味でした・・・また食べたくなりましたが・・・何処にもないね~少し癖のある味です!何年か前にソニープラザでグミを見つけて買った事があるんですが・・・少し違ったような・・・アメリカでは子供に食べさせる胃薬みたいなモノと聞いた事がありますなんか懐かしくて・・・食べたいな~
スカポン太:
こんにちは。
リコリスアイスを食べた事あったなんて!すばらしい。
やっぱりお店の人に止められたんですね(笑)

自分はどうにもあの味は苦手なんですが、たまにどんな味だったか「また食べてみたいな・・・」と思ったりします。やはり、クセになるものなのかも。
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