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映画キックアス

ポップコーン、ソーダ、そしてリコリス
映画版「KICK-ASS」でこのセリフが出てきた時は興奮しましたよ。

そんなわけで、映画版キックアスですが、なかなか面白かったです。
コミック版よりもコメディ色が強めで、いろいろハードなことはあったけど、全体的にギークの夢が詰まった青春ものという感じ。これはなかなか爽快で「映画として」は正解だったのかなと思えました。
全身タイツのなんちゃってスーパーヒーローが、街をとぼとぼ歩く・・・というのがそれだけで笑える。これは実写だからなんだろうねえ。
実写化の意義というのがすごくあった。
ヒットガールのアクションがとにかくすげえんですが、これもまた「実写の子役が本当にそういうアクションをしている」というとこも最高なのです。
あれ、スタント使ってるのかなあ? 体格的にスタントなんて使えないと思うので、ほぼ全部本人だとしか思えない。バタフライナイフのアクションとかも圧巻。
そりゃあコレ見たら、ハリウッドの監督達クロエ・モレッツ欲しくなるわw

ヒットガールちゃんはとにかく最高なんですけど、ビックダディがヤバくてさらに最高。
つうか、ニコラス・ケイジ怪演すぎだ(笑)
コミック版では渋い親父というだけだったのに、映画版ビックダディはキックアスより遥かに濃いギーク!
ギークの成れの果てがこれか・・・・!(これってニコラス・ケイジもアイディア出ししてたんじゃなかろうか・・・・)

なにしろ、映画版だとコスチュームは完全にバットマン。
そのうえ、ベルトにはBDとイニシャル付き。もちろん娘のヒットガールにもHGのイニシャルが。アホかw
さらにコミックではターゲットは写真だったんですが、映画版では自らアメコミ絵での手書き。
元警官だけど、どう考えてもアメコミ好きすぎの成れの果てって感じです。
ヒットガールへの指示が「クリプトナイトを使え!」とかいうのも酷い、ヒットガールへの教育に「ジョン・ウーの長編第一作のタイトルはなんだ?」とかいうのも酷い。それ戦闘訓練とは関係ないよね!?www

そんなキックアスで好きなシーン
kickass_mvmanga01.gif
ニコラス・ケイジの演技最高だったわ。

まあ、全体的にコミック版よりギーク色が強めでしたね。
ヘルボーイのポスターがどーーーん!と飾られてたり、「スコット・ピルグリム」も出てきたし。
「スコット・ピルグリム」はデイブ(キックアス)とつきあいはじめたケイティがその影響で読み始めたものなんですが、いわゆるアメコミではなく「スコット・ピルグリム」や「少女漫画(ShojoManga)」ってとこが、あっちのコミックブックカルチャーをあらわしていていいですねえ。(きっとManga版トワイライトも読んでたりするんだろうなあ)

「そのスーパーマンみたいなやつが・・」「ボス違います、バットマンです」「どっちでもいいわー!」
みたいなやりとりもおもしろかった。

ギークなネタが満載なうえ、「コミックブックストアに女の子が!!」みたいなギークの夢をつめこんだ映画でしたねえ。リアルな描写で進んでいても、最後はアメコミにしちゃったし。

ああ、そういえば映画キックアスに登場したコミックブックストアの「Atomic Comics」は多分実在するショップですかね?
コミックブックストアに喫茶コーナーなんてあるんだ・・・


以下コミック版との比較。ゆえにネタバレ大いに含む。
とまあ、映画は映画でなかなか気持ちいい傑作だったんですが、コミック版のリアルな虚無感ややるせなさも捨てがたい。
細かい設定や、ギーク親父化したビッグダディなど内面もけっこう違ってはいたのですが、大筋はほとんど変わっていないのはちょっとビックリしました。もっと展開が違うものになっていたのかと思っていたので。

例えば、レッドミストと組んでのミッションで火事の現場に突入というシーンがあるんだけど、コミック版では普通にヒーロー活動として火事現場に突入して猫ちゃんを救い出すつうものでしたが、映画版だとキックアスを罠にはめる倉庫がビックダディによって火事になっていたという具合。
設定や目的はまるで違うけど、同じ状況を再現してたのはなかなか。

レッドミストが裏切り者というのはどちらも同じなんだけど、コミック版では「実は!」という感じで裏切りが物語のキーとなっていたために正体が最初はあかされなかったんですが、映画版では最初から敵側として描かれている。コミックを読んでから見た派としては、この設定は良かったかな。

そういえば、レッドミストは最後に「ジョーカー」の名を出して悪の高笑いかましてましたけど、映画版の設定はどこかスパイダーマンのオズボーン親子ぽかったなあ。
ビッグダディの警官時代の相棒も映画設定でのキャラだけど、不法自警団活動しているビックダディの正体を知りいさめつつ黙認してくれている常識人の黒人の相棒とかも、なんかアメコミっぽい。
彼女にキックアスの正体をあかすところもそれっぽいかなあ。
やはり映画版はアメコミへの数々のオマージュで構成されていると思う。

ビッグダディの過去の回想はアメコミ絵で再現だし。(この時の絵はコミック版のジョン・ロミータJrの書き下し)
スタッフどんだけアメコミ好きなんだ。

コミック版はコミックなだけあって、逆にこのへんはもっとドライ。

ヒットガールの殺戮シーンもコミック版のほうがはるかにエグイです。
火炎放射器で焼き殺し、大鉈で頭かち割り、本人も肉たたき棒で顔面えぐられたり。

ビッグダディの死に方も映画にようにドラマチックではなく、もっと残虐であっさりしたものだったしなあ。

キックアスの扱いも自分にはかなり違ったように思えました。
原作では前に描いたように「ホーリーランド」のような、無目的で虚無的で自分が自分である証しをもとめてさすらう感じが強く、キックアスデビュー戦のチンピラとのバトルも、勝手にキックアスが因縁つけて殴りかかるという酷いもんでしたが、映画だと車上荒らしをしているのを止めに行くという動機付けができていた。

このあたりも違いとして象徴的で、コミック版ではまだこの時は「キックアス」の名前は無かった。
映画では最初から自分で「キックアス」の名前をつけていたし、後にyoutubeで流される映像でも自分から「I'm KICK-ASS !」と名のっている。
何をやろうとしていたのか、何であろうとしていたのかも不明瞭だったコミック版とは大きな違いだ。
映画版ではさらに「何もしないで見ていたあいつら、そして自分が許せない」みたいな正義感も全面に出てくる。
最後までしょっぱかったコミック版と違って、映画版だと最後の最後にコミックブックヒーローになれたしね!

コミック版だと、現実に戻ったらケイティにも振られ、キックアスパパは新しい女つくってるしと、何も変わっていないグダグダな日常に帰還なんですよ。
このやるせなさもたまらないんだけど、映画はあのノリからすれはあのハッピーエンドはギークファンタジーとしてよかったのかなとは思います。
コミック版はコミックだけどアメリカンニューシネマみたいな。

そうだ、「本物のスーパーヒーローとは」を示す演出の違いも印象的。
むしろこれはコミック版が非常に変なんだけど。
映画版ではヒットガール達との出会いで「普通に悪人をなぎ倒す力」に「本物だ」と思った感じなんだけど、コミック版では「ビルの屋根から屋根へ跳んで渡る」のが「本物だ!」みたいな演出だったんだよなあ(笑)
自分がそう感じただけかもしれないけど、コミックでは特に印象に残るシーンだったし。
この屋根渡りは日常から一線を飛び越える隠喩ともとれるけど、悪人をなぎ倒すのは警官でも武道家でもOK、しかし「屋根渡りこそがヒーローの条件」というところに、しょうもないこだわり感じてその基準の変さが妙に好きです。


とりあえず、映画はクロエちゃんのアクションとニコラス・ケイジの怪演がすばらしいので見ましょう。
もっとモヤモヤした何かが見たかったらコミックもどうぞ!みたいな。
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コメント

massando:
「ヤマト」だけでなく「キックアス」も観ております。
ヒットガールの活躍を見て「ヒャッホー!」と喜ぶ反面「それでいいのか?」と突っ込む自分がおり、面白いんだけど後ろめたさを感じさせる作品でしたね。
自分的には「エスター」に並ぶ非道徳映画のお気に入りです。
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contracts_pc:
映画だとラストでデイブが普通に敵を撃ち殺してるし、全然シルバーエイジじゃないですよねw
原作のあのやり取り大好きだったんですが。
でもみんなのあこがれジェットパックが出てきたからまぁいいや!
真空管:
なるほど「ギークの夢」としてなら映画のほうがイケてるかも知れませんね
ニコラス・ケイジの仕事には私も感嘆致しました

細かい点ですが映画ならではの表現として
レッド・モービル発車シーンでかかる「あの」BGMのパチモン具合とか二ヤリとしました
「ダニー・エルフマンは?」「大好きさ」…やっぱあのテーマだったんだろうなぁ
S:
あちゃー
http://birthofblues.livedoor.biz/archives/51154367.html
スカポン太:
>massandoさん
massandoさんも見ましたか!
爽快だけど、ヒットガールは「どこか間違ったイノセント」ていう感じですよね。
そのあたりが、確か制作で難航したポイントだったようですが。

>contracts_pcさん
自分も「あれ?なにげにキックアスくん人殺し・・・?」みたいな。
あのへん映画ではアメコミっぽくというか、マンガっぽい演出にして生々しさを薄めた気がします。ジェットパックといい「見せる演出重視」が映画版の特徴ですかねえ。

>真空管さん
ダニー・エルフマン最高!まあ意識しまくってましたね、きっと。

映画だと、ツレのギーク友達も彼女できてたし、ギークでもやっぱり「コミックも大好きだけど、おっパいもさわりたい!」んですよ。
という、ドリームな映画ですねえ。
コミック版とはストーリーラインは同じでも違うノリになったのは、それはそれで良かったと自分は思います。どっちが好みかは見る(読む)人が決めればいいかな、


>Sさん
ああ、そうそう。実際のクオリティはわからないのですが、そのへん気になったので池袋にいかないで、渋谷のシネセゾンに観に行った私です。
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