おさらいタートルズ アニメ編3(旧亀シーズン8~10)

「レッドスカイ」
その作品はそう呼ばれた。
明るくさわやかな青い空は消え、常に暗い赤い空で描かれる。


丸くて黒目の1987年旧亀。鋭く白目の2003年新亀。
しかし、その間にもう一つのタートルズが存在する。

後期旧亀。87版タートルズの末期。
1994年から始まる「ティーンエイジミュータントニンジャタートルズ」シーズン8〜10
通称「レッドスカイ シーズン」。
一応シーズン7から世界は継続してはいるが、別物になったといってもいい。


ロゴも変更され、OPや主題歌も変更された。
1993年の映画「Teenage Mutant Ninja Turtles 3」の翌年であり、いわば映画版にデザインを近づけたもの・・・だと思う。

目つきは鋭くなり、「穴の空いたバンダナ」というリアルな表現となる。

シーズン4でミケランジェロの武器がヌンチャクが鈎付き投げ縄に変更されていたが、それは継続。(こういう雰囲気に変えたらヌンチャクに戻してもいいと思うんだけどなあ)

エイプリルのファッションも黄色いジャンプスーツから、暗い配色のジャケットとパンツに変更。
変更されたのは外観だけではない。
「レッドスカイ」で表されるように、画面のトーンは暗くなり、陽気さは薄れ、内容もおちゃらけアクションからハードなストーリーへと変わった。

マンガのような武器ではなく、リアルな銃火器も描かれ

バトルによってタートルズはケガもする。

シュレッダーたちは継続でそのままのデザインだが、以前のようなバカっぽさはなく、冷酷なヴィランに。
そして、クランゲはマンガのようなロボットボディに乗り込む事はなかった。
(※ただし、あのロボットボディは最終話で再登場し重要な役割をはたす)

そんなシュレッダーたちによりチャンネル6は爆破・破壊される。
それまでのタートルズの世界観との決別のシーンだ。
エイプリルだけはフリーのジャーナリストとなって、タートルズと共に行動するが、以後アルマたちチャンネル6のメンバーは登場しなくなる。
さらに、シーズン9になると
タートルバルーンも登場しなくなる。
シュレッダーやクランゲ、ロックステディ&ビーバップも登場しなくなる。

シュレッダーたちにかわってタートルズたちの宿敵となるのは、銀河の支配者オーバーロード「Lord Dregg」
かつてのシュレッダーたちと違い、おちゃらけ要素皆無の冷酷非情な暴君。
一方、タートルズにも新しい仲間が加わる。


スプリンター先生の元に忍術修行しにきた青年「カーター(Carter)」
ミュータンジェンにより彼もミュータント化するが、今までのミュータントと違って、普段は人間の姿で自由にミュータントに変身できる、変身型ヒーロー。
(カーターが黒人キャラなのも時代の反映だろう)
チャンネル6が無くなり、シュレッダーも退場し、以前のキャラクターたちはまったく登場しなくなり、それまでのタートルズの要素はほとんど消えて、これをもって完全に旧亀、1987年版タートルズとは違う作品になったと言ってもいいだろう。
(※シーズン10のクライマックスでシュレッダー&クランゲは一時的に再登場するが、ロックステディ&ビーバップはもう登場することはなかった)
一方、タートルズたちにも変化が。



ネクストミューテーション!

特にドナテロが怖い。
パワーアップではあるが、これはむしろ「怪物化」
この変身を何度かしているうちに、精神も怪物化し凶暴となって、仲間同士で争いあう事も。
これによりタートルズは思い悩むようになる。
そう、まるでX-MENのようじゃないか。
アメコミの鬱展開がタートルズにも。
2003年新亀の初期よりも暗い雰囲気をもつのが、この97版後期タートルズ「レッドスカイ・シーズン」なのだ。
(新亀はストーリーこそハードになったが、亀達は旧作とは違った明るさがまだあるしね)
「Lord Dregg」をディメンションXに追放し、最終話「Divide and Conquer」をもって1996年11月にタートルズは終る。
これが1987年版タートルズの最後だ。
世界としては繋がっているが、その作品内容の違いから1987年版タートルズと、1994年版タートルズとしてわけてもいいくらい。
あの陽気なでファニーでサタデーモーニングだった旧亀がどうしてこのような変化をとげたのか、本当のところはわからないが、それはタートルズ単体の変化というより、「時代の変化」ではないだろうか。
日本で放送されていたニンジャタートルズ(テレビ東京版)で陽気な亀たちが大暴れしていたころ、アメリカではレッドスカイに移行していた。
そしてそれは日本、アメリカともに同じような状況で、日本のタートルズの後番組が「新世紀エヴァンゲリオン」だったことに象徴される気がする。
つまり20世紀の終り。時はまさに世紀末。
1995年頃の作品を並べてみよう。
新世紀エヴァンゲリオン:1995年〜1996年
タートルズ シーズン8〜10:1994年〜1996年
バットマン アニメイテッド:1992年〜(ニューアドベンチャー 1997年〜)
ガーゴイルズ:1994年〜1996年
アメコミではイメージ・コミックから「スポーン(Spawn)」が1992年開始し、スポーンフィギュアブームが1994年、スポーンのアニメ及び映画が1997年。
ヒーローアニメがダークでハードな物語に変化していった時代。
そしてそれにハマる大人のアニメファン層の出現。
正しくは、大人のコミックファンなどはすでに80年代からいたが、「制作側がそれに気がついた」というのが90年代後期だったと言うべきか。

ここで注目したいのが「ガーゴイルズ」
ディズニーが製作したこのTVアニメシリーズは、重層的で深く重く暗いストーリー、過去から未来へ続く壮大にして複雑な人間関係などで高年齢層のファンを多く獲得した。
タートルズ・レッドスカイとまったく同時期に放送されていたこの作品は、何と言ってもタートルズと設定がよく似ていることにある。
タートルズのヒットによって「人外ヒーローチームもの」が大流行したが、このガーゴイルズはその中から生まれてきたハードなタートルズとも言える存在。
共にニューヨークに住み、人目をさけて行動し、活動は夜だけ。
タートルズは日本の忍術。人外にしてアウトサイダー。
ガーゴイルズは中世ヨーロッパの魔法。人外にしてアウトサイダー。
タートルズの住居は地下の下水道。
ガーゴイルズたちの住居は高層ビルの上の時計台。
タートルズの理解者であり人間との接点となる女性「エイプリル」
ガーゴイルズの理解者であり人間との接点となる女性「エリサ・マーザ」


タートルズシーズン8〜10のエイプリルとエリサの服装などよく似ている。
(そういえば、03版新亀のエイプリルも、ガーゴイルズのエリサも日本語版吹き替えは加藤優子。
ついでにいえば、ザ・バットマンのイン刑事も
人外と人間をつなぐお姉さん的存在といえばジェネレーター・レックスのホリデー博士も加藤優子。
・・・なんだこれ?)
これはどっちがどっちという話ではなく、この時代に合わせた「結果」なんだと思う。
>集え!ケモノ戦士たち
それでもタールズの後がまを狙って類似作品は作られてはいたが、徐々にこういった荒唐無稽なカートゥーンチックなヒーローものは減少してゆくこととなる。
(同時にヒーローものの代りに台頭してくるのが、ダグ、ラグラッツ、ヘイ・アーノルドなどの日常ものアニメ群)
特にタートルズは長い放送期間のため、かつてファンだった子供たちも大人になり、それゆえ時代の雰囲気に合わせた、こういった改変が必要だと判断された。と思っています。それが正しかったかは別として。
ただそれが同時に1987版タートルズの終焉にもなったのだとも思う。
そしてタートルズが再びアニメとして復活するのが7年後の2003年。その7年のうちにまた時代は変化していた。
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コメント
- ひげお:
- 旧亀が90年代後半まで続いていたのは知ってましたが
こんなハードでダークな雰囲気だったとは…
でもアメコミでもダーク路線のImage Comics版タートルズがあるし
こういった暗さもタートルズの一つの魅力ですね。
それにしても凄い情報量!
おさらいどころか初めて知ることばかりですよ!ウヒョー!
- スカポン太:
- まさしく、この直後に始まったのが、Image Comics版タートルズですね。
スポーンの会社のImage Comicsってとこで、世の中がダーク路線最高潮のころだったのかも。
- 御霊神:
- あー、自分は陽気な亀たちで終わっていたので、これは初めて知りましたが・・・
怪物化てwあれ、忍術って何だっけ・・・w
http://www.nicovideo.jp/watch/sm960565
ビデオ版、こんなんですよー。
- 帰まん:
- >>以前のようなバカっぽさはなく、冷酷なヴィランに。
冷酷なサワキちゃんイノブタとバカサイと酢ダコが想像できませんw
スーパータートルズとはまた違った意味で黒歴史っぽいですね・・・
ネクストミューテーションはグロかっこいいの好きなので割と気に入りました。
- スカポン太:
- >御霊神さん
これはミュータントニンジャタートルズの「ミュータント」の部分ですね
ただ、この後期タートルズはスプリンター先生の出番も少ないんですよ。
なので、ニンジャチームというより、ミュータントチームって感じの方が強いかも。
ビデオ版どうも。内容的には同じだと思います。
>帰まんさん
制作側もそうだったのか、特にロックステディ&ビーバップは出番も少ないですね。
スーパータートルズもアレだったけど、実はアメリカでもタートルズはけっこう黒歴史っぽいのいっぱいあって、あまり日本を笑えなかったりw
アメリカ公式のアレなタートルズまとめてみたらけっこう面白いかなあ。
玩具はすごいのいっぱいありますけどね。
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- 「国政というものは、従来のやり方を続けて行き詰るか、行き詰まりを打開するために政体そのものをぶち壊すか、そのどちらかの選択を必ず迫られる」byマキャベリ
「「痛い」リアルなグロや暴力描写を入れる」
「「痛い現実」を持ち込んで『お約束」を否定して笑いをとる」
…こういう手法をとるということは、そのコンテンツがマンネリで行き詰っているということです
タートルズも例外ではなかったということですか…ありゃやりすぎだ>ネクストミューテーション
そこまでしても3シーズンしか続かなかったというべきか、行き詰っていたのが3シーズンも続いたというべきなのか…テコ入れは難しいですね
- スカポン太:
- まあ長く続いた作品ですからねえ。どうしても末期は行き詰まり感が。
ただ、これが終ったあと今度は「実写版TVシリーズ タートルズ」が始まるんですけどね!
あははは。