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Graphic Novelとは?

アメコミを読み始めて疑問に思うことといえば「Graphic Novel」という言葉。
自分も最初は「Graphic Novel」と「TPB」と「COMIC」の違いってなに???と、思ったものです。

箱男:「Comics」は胡散臭い
こちらを読めばだいたい把握できるかと。
コメントの中で「言葉ってじつは体系的なものじゃないですからね。」と言っておられるので、(安心して)現時点での自分なりの解釈を書いておこうと思う。
別に出版社に聞いた訳じゃないので、正しい定義ってわけでもなんでもなくて、海外サイトのフォーラムなの覗いてる時に「現地の読者」がどのような場合にどんなふうに使っていたか、から自分なりに推測してみたものです。

■comic book
まずこれだ。これ、「マンガ本」と訳すとかなり混乱する。
コミックというジャンル全般ではなく、アメコミ屋でいうとこの「リーフ」のことを指してる場合がとても多いです。あの毎月発行される広告のはいったペラペラしたやつのこと。
いままで日本のように単行本化するということがなかったため、comicといえばあの形態しかなく、ゆえに、あの出版形態こそがcomic以外のなにものでもないと。
雑誌といっても複数のタイトルが一緒になってるわけでもないので、magazinでもなく、bookがついたのかと。
だから、あのリーフのことそのものをcomicと呼ぶのもよく目にします。(うまく文脈読まないと難しい)

ただ、magazinのcomicもあって、「ヘビーメタル」や「マッドマガジン」なんかはmagazinなんだろうなあ。完全にcomic専門誌とはいえないかもしれないけど。
完全なcomic専門誌といえば、最近ディズニーが出してる「ディズニー アドベンチャー」が一番しっくりします。
DCが出してるカートゥーンズ・アンゾロジー本「CARTOON NETWORK BLOCK PARTY」なんか一度に複数タイトルが掲載されてるけど、やっぱりcomic book。
中身の定義だとややこしいから、まずは「見た目」ですよ、「見た目」。区別はそこからのほうがわかりやすい。

■comic strip
単純にコママンガのことでいいかと。由来については上記「箱男」のエントリの説が説得力あるように思えます。comic(お笑い)strip(コママンガ)だったものが、いつのまにかcomicだけでそのジャンルを示す言葉になってしまったという説です。
物語のプロットなどに出てくる「コミック リリーフ」という言葉なんかにもその痕跡が。
「漫」画と同じで、本来comicはギャグを意味していた。
で、comic stripですが、よくこれは新聞掲載しているマンガのこととして説明されるけど、今時は新聞にこだわる必要はないんじゃないかなあと。雑誌やwebに掲載してても多分comic strip。
日本の四コママンガのように、すべて同じ大きさのコマが連続しているあのスタイルであれば、多分それをcomic stripと呼ぶと思う。4コマだろうが8コマだろうが、もっと長くてもだ。
自分がcomic stripと言われて頭に浮かぶのは、「ピーナッツ」や「ブーンドックス」「ガーフィールド」など。「ディルバート」もそうなんだけど、あれは違うかな?
「SPY vs SPY」は・・・どっちなんだろ?

■Graphic Novel
これは出版社が勝手にいいだした言葉だと記憶しています。
「このcomicは大人の鑑賞にも堪えうる絵でつづられた小説で、低俗なcomicじゃないんですよ!」という意味で「Graphic Novel」。
形態としては「書籍」となり、comic とは流通も区別されています。「書店」であるamazonで買えるのはコレ。
だから、意味として「高級なコミック」として使う人もいるけど、実際には「書籍」としか存在していないので、日本で言うとこの「単行本のcomic」をさして間違いないでしょう。というかみんなそーいう風に使ってるように見えたけど。

■TPB(トレードペーパーバック)
これと、「Graphic Novel」の違いに昔悩んだ~~~。
とりあえず、ズバリ言えば、comic bookのものをまとめて本にしたのがTPBです。合本。
日本の「単行本」の意味にもっとも近いでしょう。
でも、形態としては「Graphic Novel」と同じです。この二つの違いは?内容が高級かどうか?そんなのだれがどこで判断するの?
悩んだ末に自分が出した結論が、

「Graphic Novel」  書き下ろし単行本
「TPB」 既存の発行物をまとめた単行本

ぶっちゃけ出版社がどう言い出すかで決まるとこもあるので、必ずしもこれにあてはまらないこともあるだろうけど、目安としてはこれでOKかと。

ただ、本としての形態は同じなので、売り上げ記録なのどの扱いではTPBもGraphic Novelの中にカテゴライズされます。

そうそう、中身がちっとも高級じゃないけど、海外翻訳のMANGAも「Graphic Novel」です。つまり、アメリカでの発行の場合、雑誌掲載としてのcomic bookの形態をとらないで、いきなり単行本として出版されるためTPBではありえず、「Graphic Novel」となるわけですわ。あははははは。
ゆえに、今時はGraphic Novel=comic単行本という意味で使っても間違いないかと。

で、TPBですが、これって別に「合本」とかいう意味じゃなくて、ただの本のサイズからきた名称だと思うんですよ。(※以下推測)
アメリカの小説などの廉価版のものはペーパーバックと呼ばれ、そのちょい大きくややグレードが上のサイズのものをトレードペーパーバックと呼ばれていました。そのトレードペーパーバックのサイズが、ちょうどかつてのcomic合本と同じだったので、そう呼ぶ慣習がついたと思われます。
「新書」とか「文庫」みたいなものかな。サイズですよ、サイズ。見た目ですよ見た目。

最近のTPBはちっちゃくなって、いわゆる「ペーパーバック」のサイズなんですが、それでも習慣からトレードペーパーバックと呼ばれているにすぎない。・・・と、思うんだけどね。
ただ、最近の小さいサイズってのは日本の単行本を参考にしているためか、MANGA-SIZEなんて呼ばれてたりもするみたい。

■MANGA
ズバリ日本の漫画。
なんだけど・・・最近は「comicじゃなくオレはMANGAを描いてるんだ!」
といった人も多くて、なんつうか表現つうか指向性の違いっつうか・・・線引きがよくわからなくなってますが、感覚でわかってください。
つまり、comicの訳語はMANGAではなく、comicはcomic。MANGA はMANGA。
グレープフルーツと蜜柑、みたいな距離感をもっておいたほうが、向こうのフォーラムとか覗くときには理解しやすいかと。
外人が描いてるcomicを自ら「MANGA」と言ってる場合はそこに強い主張があると考えた方がいい。(まあ、ノリで使ってる人もいるけど)

そーいうわけで、最近comic bookの形態をとらないで、書き下ろしで「Graphic Novel」で出している若い作家の本をよく見かけます。大御所の高級なcomicとしての「Graphic Novel」ではなく、かつオルタナティブでもなく、おそらくハッキリ公言はしていなくとも本人は「MANGA」を描いてるという意識が強いんじゃないかなあと。日本の翻訳漫画のスタイルをまねて単行本でいきなり出版。
最近買った「Sharkife」や「Scott Pilgrim's」など、そんな匂いがいっぱいします。


まあ、こういう出版物の言葉の定義なんぞはあまりつきつめないで、だいたいこんなもの・・という程度にしといたほうが無難かもしれません。

日本の「小説」にしてもその定義を定められるものだろうか?
そもそも大長編もあるのに「小説」って??

まあこれは昔は「論語」とかの儒家が薦める偉い本をそのまま履修するのが高級なことであって、自分で物語なんぞ書くなんてものは幼稚なこととされていて、「論語」なんかは「大説」でそういったものは「小説」と小馬鹿にしたのが由来だったと思います。
うん、ちょうどマンガやコミックの扱いと似てるぞ。
もともと「小説」なんてものは「低俗」なもので、教養ある大人が読むものじゃなかったんですわ。わははははは(かなり昔だけどね)


こうして見てみると、日本で「●●コミックス」と言って単行本につけたりしてるのをみかけますが、単行本ではすでにcomicsではないので、おかしな感じをうける人もいるんではないでしょうか。単純に英語がカッコイイからつけただけでしょう。
これではむこうで「HENTAI」やら「OTAKU」がちょっと違った意味で使われていても、笑えません。苦笑するけど(笑)
でも、それをつっこむのはヤボでしょう。ニュアンスや意味が伝わればいいことですよ言葉なんて。多分ね。
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Graphic Novelとは?/日本製アニメとマンガの国際戦略
☆Graphic Novelとは?(ReadMe!Girls!の日記・雑記)海外漫画・アニメ事情研究家としては、Graphic NovelとTPBとCOMICとCOMIC STRIPの違いも知らずにいたなんて、うかつでしたね。それぞれについての文章は読んだことがあるんですが、違いについて解説されたものは始めて読み.

コメント

とおる:劇画つうのも最近聞かないね
ヒーローコミックは、長い間、一般の書店から相手にされない存在だったわけで。「Grapic Novel」という気負った名前には、門前払いをくらった営業スタッフたちの“俺たちの作品は読み物としても立派なものなんだ”という心情が込められているんじゃないかな。
スカポン太:
マイナーメディアからのし上がる時は必要以上に大仰になりますね。映画も歌謡もしかり。
しかしなるほど、そのときの営業の心情を考えると、なにやら熱いものを感じますね。
ていうか、この定義そんなにはずれてませんよね?ドキドキ。
偉そうに言うほどアメコミ読んでもないもので・・・
boxman
> とおるさん
> “俺たちの作品は読み物としても立派なものなんだ”という心情が込められている

いや、これはないっしょ。
こういう発言はたまにちょこちょこ見かけるんですが、「Graphic Novel」の語源についてはいまのところ一番説得力があるのは「70年代末にウィル・アイスナーが作家活動を再開する際にそれまでの作品と区別するために自称した」ってヤツなんで、だとするとスーパーヒーローは関係ない(次点もNBMが書店流通に売り込みかけた時の宣伝文句なのでどちらにしろマーヴル、DCは後追い)。「Marvel Graphic Novel」辺りの特定の叢書にはそういう気分が込められてたかもしれませんけど、その辺は分けて考えるべきでしょう。

> TPB
いちばんわかりにくいのはTPBが版型を示す言葉のクセに大きさが決まってない事でしょうね。ニュアンス的には「大判の」くらいな感じなので、A4変形だろうが、B5だろうが、ソフトカバーならペーパーバックサイズ以外のどの大きさでもTPB。いちおういまの日本の単行本サイズのが出だした当初は(というかいまもいってるとこはいってますが)「大判の」TPBに対して「Traveler」とか「Digest」といった言葉で小ぶりなペーパーバックを位置づけてました。いまんとこ定着してないようですが(w

どうでもいいですが「Digest」といわれると全部収録されてないみたいな気がして嫌なのはオレだけでしょうか。
とおる:あらま
>boxmanさん
まさにその「Marvel Graphic Novel」を思い浮かべてしまったもので。
勉強になりました~。
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スカポン太:Digest
「Digest」見かけたことがるのですが、それは私はてっきりそのまんまダイジェスト版で、いわゆるセレクトされているものかと思っていました。サイズのことだったですか!
現物見ないで、webで言葉だけ拾ってゆくとわかりずらいなあ。

「Graphic Novel」の由来、なるほど勉強になります。
由来はともかく、この名称で後追いしたり定着したりしたのは、この名称がカッコよかったからじゃないかなあ、なんて思いました。
boxman
> ダイジェスト版
そうそう、オレもそう思ったんですわ(w マーヴルのプレスリリース読むまでわからなかった。わかって以降もなんとなくイヤです(w
ちなみに「Traveler」も最初はクロスジェンが有名なSFTRPGのコミック化権買ったって話かと思ってました。

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