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Into the Unknown  兄弟の不思議な闇の童話 「Over the Garden Wall」

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北米CNで11月はじめに短期集中放送された新作カートゥーン 「Over the Garden Wall」
放送されるや、各所で絶賛の嵐という今年最後の衝撃作。

ふと不思議な地、どこでもない名無しの地「Unknown」に迷い込んだ兄弟、兄のワート(Wirt)と弟のグレッグ(Greg)。
途中で出会った青い鳥(Bluebird)のベアトリスと共に帰り道をさがすが、そこで出会う奇妙な住民、奇妙な出来事。
それはグリム童話のごとき、闇深き物語。
それは壁を超えた向こう側、現実との狭間の物語。
 


とまあ、最初絵だけ見たときはアドベンチャータイムやチャウダーのような感じなのかと思ったら全然違ったという。
雰囲気的には「銀河鉄道の夜」が近いんじゃないかしら。
ギャグやコメディではなく、物語の作品。


「Over the Garden Wall」の導入パート
すでにギャグカートゥーンとはテイストが違うことがおわかりであろう。
これがまた、見終わった後に再びこのイントロを見るとグっとくるんだよねー。

10分程度のショートエピソードが10話で完結するというショートシリーズというのも珍しいが、むしろ10分カートゥーンシリーズというより、100分の劇場用アニメ映画。
これがフランスだったら、劇場用アニメになってたはず
アメリカでは3DCG以外では劇場用は難しいからこういう形になったともいえるが、劇場用並のクオリティがある作品。
こーいう作品がアメリカのTV番組で、というよりカートゥーンネットワークから出てくるというのは、少し驚いたよ。

グリム童話のような・・・と書いたが、舞台は19世紀のアメリカテイスト。
なので音楽もピアノにジャズと、ベティブーブなどのフライシャー作品を連想されるところもある。

これがまた素晴らしいんだ!!! 音楽がすばらしいんだ!!


このへんの動きは、ちょっと湯浅 政明を思い起こさせたりもする。
いや、ショメかな?なんにしても、独特だよね。
まあ、こーいう動きはここだけなんだけども。


これらは、特にアメリカ人には、アメリカの古き良き暗黒時代的なフォークロアと不気味なノスタルジックさに魂がゆさぶられるんじゃなかろうか。

中でもフライシャーぽいというかオールドカートゥーンリスペクトっぽいのはエピソード8
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不思議な地からの帰還の旅ではあるけど、10話で完結するつくりなだけに、サムライジャックのように放浪したまま放置ということもなく、きちんと完結する。このへんがTVシリーズというより劇場用アニメぽいところでもある。

無邪気な弟のグレックもいいけど、やはり兄のワートくんが良いのよね。
そしてベアトリスかわいい。
ウッズマンすてき。
序盤では不気味なおっさんだったけど、回が進むにつれウッズマンにハートつかまれるよ。
い~~~~い表情するんだこれが。

境界の物語と語ったように、森と人の境界「木こり」ウッズマンが重要な役割となる。

そして森の闇の権化。不気味な野獣「ビースト」

不思議で奇妙で不気味な放浪譚だが、じょじょに進行してゆく物語奥にある闇に心引き込まれていることだろう。

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個人的にはエピソード7「The Ringing of the Bell」が好きです。
エピソード9~10のクライマックスは別格。息を呑むとはこのことか。

この作品がどういうものを目指しているのかは美術からもわかる。
キャラクターこそ絵本のキャラのように単純化されているが、背景はリアルだ。

そして指の数。
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カートゥーンの指の数はたまに話題にのぼるが、あれは単なる省略技法。
チビキャラなどで「鼻」を省略して描かないのと同じようなもの。
日本でも「マンガっぽい」絵柄のものは4本指で省略されていたりした。

しかし、OTGWは5本指。あれだけ顔とか省略されていても5本指。
これが「マンガっぽい(ギャグカートゥーン)」とは違うリアリティラインでデザインされていることがわかる。

カートゥーンはデザインにすべて意味がある。
作品の世界観がすべて絵に込められている。
他のカートゥーンでも、指の数に注目してみると、その作品がどこを目指しているのかわかる。
あちら側のゆかいで楽しいショーなのか、それとも微妙な感情やリアルさをとりこもうとしている作品なのかと。

この 「Over the Garden Wall」もそんな作品だ。

繰り返すが、これがアメリカじゃなかったら劇場用アニメになっていただろう。
だから日本でやるならまとめて放送してポップコーン枠あたりが似合いそう。
って・・・日本でもやるよね??

とりあえず、太っ腹なことに低画質ながら、Over the Garden Wall Facebookでweb配信されていて、視聴制限なく日本からでも観られる。
(期間限定かもしれないけど)

「Over the Garden Wall」のクリエイターはPatrick McHale。
構想はずいぶん前からあったようだけど、実現したのはやはり「今の時代」、「今のカートゥーンの変化」があったからこそじゃないかと思う。
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コメント

NeZ:
導入パートの「CARTOON NETWORK PRESENTS」って文字に本当に違和感を感じました。ハルとボンスをCNでやってたとき以来の違和感だ('w`;)

配色が全体的にセピア調で、少し昔の…なんていうかランタンで照らした屋根裏な雰囲気って感じで凄い良いなって思いました

日本CNならきっとやってくれるって信じてる…ッ!
アルト:
日本でなら「闇の森の子供たち」って邦題にしてほしい。

うーん、やっぱり内容的に映画っぽいからポップコーン枠での全話一気放送希望ですね。
おみそしる:
Patrick McHale は、CALARTS 出身で Flapjack と Adventure time
のメインクリエーターです。本作からも微かに Flapjack 臭がしますね。
素晴らしい作品です。

CALARTS 出身者で Cartoon Network Studio(通称 Pendleton Ward 学園)
所属のクリエーターが独り立ちしたのは、これで何人目でしょうか。
卒業生である Mike Roth、Alex Hirsch、Rebecca Sugar など
皆、独自の作品を構築して人気者になっています。

Pendleton Ward やはり只者ではありませんね。

Lars:
スカポン太さん はじめまして
いつもマニアックな情報ありがとうございます
Greg君って、ムーミンに出てくるロッドユールという鍋をかぶったキャラクターを彷彿とさせます。
スニフの父です。クロットユールという息子も鍋をかぶったキャラでとってもかわいいです。
いぜんコミックの紹介をなされていたのでつい、ムーミンネタを・・・
あとヴェアトリス(ヴェアトリーチェ)ってダンテの神曲にでてきてダンテたちを導いてくれる女の人の名前なんですが、この物語でもなにか意味がありそうです 
では 
スカポン太:
才能があっても世に出てこられる土壌があってこそということもありますね。
なんにしても、ギャグやアクション、そしてキャラもの中心のCNでこういうのが出てきたのは驚きです。
映画祭にでも出品されてもよさそう。

>Larsさん
クロットユールですね、はい知ってます。
ベアトリスはやはりダンテの新曲をおもいこさせる名前ですよね。
これもまた魂の彷徨。
そういった物語だからかもしれません。
kent:
これよかったですね!
ギャグもしっかり熟してるから初めはそっちかと思いました。
その上で世界も面白く積み重なってく事に驚き。

youtubeにサムネで遊んでる歌コレクションがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=LmORatsGUC8&list=PLg6KfZlgBuDWDfSJRb8iV1lesGcQnDuGs&index=1

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